目指せ、自転車星人!

何歳までも自転車生活

もてぎ100㎞サイクルマラソン(その2)

1月4日(木)

 

午前4時 携帯のアラームが鳴る。ふとんにくるまっていたいが、かなちゃんのように遠くからレースに参加する人のことを考える。前日に現地入りし、わざわざ高いホテルに泊まって参加するのだ。それに比べてちょっと早起きすれば行かれるところに住んでいる私は恵まれている。ゆっくり起き上がり体調を確認する。大丈夫そうだ。これなら規定時間内に完走できなくても4時間いっぱいは走り続けられるれるはずだから、その分楽しめばいいじゃな~い、と気持ちをラクにする。冬装備のウェアを身につける。ストーブの温度計は室内で15℃を示している。やった!予報通り今日はあまり寒くないんだ。

暖かいだけで元気が出て、ぱっぱっと飲料を作りボトルに詰める。ボトルをスーパーの袋に入れ5時過ぎに出発。

 

クイックスタート用の飲料は手元に置き、飲みながら移動。コンピニに寄り、朝食と補給食を購入。クルマの中で食べる朝食はおにぎり2個、フルーツサンド、バナナケーキ。レース前は2~3時間でエネルギーに換わる炭水化物を中心に摂る。レースの日だけは甘いものを好きなだけ食べられるので、遅いくせに私はレースがやめられないのだろうか。

 

東海から額田へ抜け河合から久米へ。国道293号を西に走る。常陸大宮を過ぎ、御前山。まだ暗闇に白く光る那珂川を渡るともう茂木だ。約一時間の軽快なドライブ。送られてきていた駐車票を示しツインリンクもてぎの北ゲートをくぐる。

2005年5月にシマノもてぎロードレースの応援で来たときの記憶を頼りに場内を進む。今日は第1パドックにクルマが停められるようだ。ピットの真ん前。ショップチームの仲間は見つからないが駐車場がふさがりつつあるので、適当にクルマを停めた。

 

6時半になり受付が始まった。歩いて受付へ行き、ゼッケンや計測用チップを受け取る。受付の列でチームの誰かと会うかと思ったが会えなかった。仕方なくクルマに戻る。どの服装で走るかまだ決めていないのでゼッケンをつけるのは後回し。自転車をクルマから降ろし、外してあった前輪を組みつける。次にタイヤ空気圧のチェック。6気圧くらいに下がっている。8.5気圧までしっかり入れる。計測チップはスピードセンサーとは反対側のフロントフォークに付属のタイラップを巻きつける。タイラップを締めようとしてのぞき込むと、フロントホイールのスポークを一緒に結束してしまっていた。タイラップは一度はめると抜けないのであきらめ、ニッパーで切る。昨日工具箱に入れておいたタイラップを出し、今度は慎重に巻く。うまく付けられた。

 

フロントホイールを固定したまま気づかず、ちょっとでも自転車を乗り出していたら、そこで私の今日のレースは終わっていただろう。スポークが折れなくてもゆがんでしまえばもう走れない。見た目は大丈夫でも時速50㎞超で走行中にスポークが弾け飛んでしまったら大事故につながるからだ。さすがに予備のホイールは持って来なかった。おまけにカーボンのフロントフォークが逝ってしまっていたら目玉が飛び出すほどの修理代だったはずだ。

 

胸をなで下ろし、スニーカーのまま自転車に乗り、計測チップの動作チェックに行く。受付脇に設けられた計測点を通過し、計測用コンピュータがピッと鳴ればオーケー。そのまま第1パドック内を一周しチーム仲間を探す。結局私のクルマから数台先に居た。ずっと反対側から回ったので見つけるまでにずいぶん時間がかかってしまったが、みんなはもうピット内にブルーシートを敷いてサイトを設営してくれている。ツーバーナーも持ち込まれお湯が沸いていた。コーヒーを飲むとトイレが近くなってしまうので遠慮し、自転車をピットに立てかけ遠征用バッグを取りにクルマに戻った。試走の準備を整えながらエナジージェルをボトルに詰め、お湯で薄める。シューズを履き、シューズカバーを着ける。

 

7時が過ぎ、店長が「じゃあ一緒に試走に行きましょうか。いくつか危険な箇所があるから、そのチェックをしながら」とみんなに声をかけてくれる。ピットレーンからホームストレートの終りに向かってコースイン。第1コーナーは右カーブ、それからゆるい下り、平坦ぎみなコーナーを左、右と折り返すと、立体交差をくぐり長い登りが始まる。登りの遅い私はここでみんなとお別れ。フロントギアをインナーに落とし、息が上がらない程度に登る。

 

結局店長の危険個所のレクチャーは半分くらいしか聞けなかったが、事前にSNSの情報交換でわかっていたことと、過去3回のレース経験と合わせて自分に言い聞かせる。まず急激なライン変更をしないこと。次に私のように周回ペースが遅い人はコース外側を走る、この2点を守ればそう危険はない。それからピットに入るため内側にラインを変えなければならないときやコース上で停まるときは手で合図するなども知識としてだけでなくできるようになっておくことだ。高速走行中でも後方をちらりと振り返り、高速集団が接近しているなどの気配を感じ取れば、その後の状況変化が予測できるので危険を避けられる。

 

 

だらだらと長い坂を登り切ると心拍計は170HRを示している。よし、これなら行ける。10月末の富士スピードウェイでは毎周回180HRまで上がってとても苦しかったが、今日は心肺は大丈夫だ。走行会でも感じたように、12月の房総LSDツーリングが心肺機能の向上に役立ったんだ。

 

試走はコースの下見なので、足を使いすぎないよう一周でピットに戻った。レース直前の補給を詰め込む。ウィダーゼリーのエネルギーイン。野菜ジュース。スタートは8時半。スニーカーに履き替えゼッケンを付ける。今日は晴れの予報で9時にはずいぶん暖かくなりそうだ。半袖のウェアにアームカバーで走ることに決めた。ウィンドブレーカーはどうしよう。補給を入れた後ポケットへのアクセスが難しくなるしなぁ。下は、ひざ下のレーシングパンツにパッドのないオーバータイツを重ねる。

いろいろ考えた結果、ウィンドブレーカーを着てスタートし、レース中一回だけピットに戻ることにした。トイレ、衣類の調節、補給、飲料の補充。私はまだノンストップで4時間レースを走り続ける自信がない。

 

今日のレースは100㎞を4時間以内に走るという二つの条件がある。6月のひたちなかは4時間で何㎞走れるかを競うレースだった。10月の富士チャレンジは100㎞を7時間以内に走る、だったからピットストップする私でもこれまではゴールできない心配はなかった。今日の場合平均時速25㎞超を要求される。登りのあるコースで私にはこれはけっこう厳しい。

男子で速い人は2時間半で100㎞を走ってしまう。女子は3時間程度。それくらいならトイレは持ってしまうのだが。会場入りしてからトイレは3回。

話しながらストレッチなどするうちに8時を過ぎた。スタート位置への集合は8時20分。シューズを履き直し、またカバーを着ける。「さあ、行きましょう」と店長の声。前列に詰めてもすぐに抜かされてしまうだけなので、私は空間の多い後方に位置を取る。

 

ルールの説明と招待選手の紹介。今日はかなり必死に走らないとならないので、コース上で招待選手を見ている余裕はないだろうなぁと考える。電光計時板がスタートまでのカウントダウン表示になった。いい意味でちょっと緊張する。スタート時、クリートがはまらないとか、初動ギヤが重すぎるとかで落車する人もいるからだ。それに巻き込まれると連続落車の危険がある。

 

1周目は先導のオートバイに続いて走り、アタック禁止。2周目からは招待選手も含めて参加者それぞれが自分への挑戦、真剣勝負の始まりだ。表示がゼロになると同時に号砲が放たれ、スタート。約600台の自転車が一斉に動き出す。(その3につづく)